今日のランチはフレンチ、シェフは四谷の名店オテル・ドゥ・ミクニの出身。
公私共に三國清三氏と親交のある私の友人との縁で当地にやってきて十数年。
訳あって明日を最後に、店を去ることになった。
今までのお礼と今後の激励を込めてランチに訪れた。
普段は数日前に連絡をして、シェフと直接話し合いながらメニューを決めていく方法を
とっていたが、今日はサプライズさせたい意味もあって直前にテーブルだけを予約して出かけた。
お得感があると言われているフィックスのランチメニューを見ながら、思案に余り、
結局はシェフを呼んで、その場でメニューを決めた。
オマールのサラダ仕立て、レンズ豆のスープ、メインは定番の骨付きラムの香草焼き
フォアグラ添え・・・。
次はデザートという段階になってギャルソンがお決まりの‘儀式’
さて、‘儀式’とは何でしょう?
そうそう、テーブルクロスの上に撒き散らされたパン屑をきれいにすることです。
そこで登場するのが、金属製のあれですよ、あれ。
すぅーっと布の上を撫でるだけで、パン屑が魅入られたようにきれいに吸い取られる
魔法の器具。
そこで顔見知りのギャルソンにお願いしてみた。
「すいません、これ死ぬ前に一回やってみたいんですけど・・・」
私の病気はお店のスタッフにも周知の事実なので、『死ぬ前に・・・』という表現は
実に迫力がある。
というかそれ程の問題でもないか(笑)
「どうぞ、どうぞ」
初めて持った魔法の器具、しっとりとした重量感がある。
「何かコツは?」と尋ねながらも、手は勝手に動いていた。
おぉおぉおおぉ、取れる、取れる。
感激!感激!
アイロンを当てるようにするだけで、どんどんパン屑が吸い込まれ、クロスはきれいになる。
あ~ぁ、もう少しパン屑を散らかしておけば良かった・・・。
どんな原理であれ程簡単にできるのかは解らない。
歴史的にみても、いつからこの魔法の器具が出てきたのだろうか。
単純にテーブルの外へ落っことしている場合もあるし、刷毛のようなもので集めて回収
しているのも見たことがあるような気がする。
因みに、英語で言うと文字通りdustpan=チリトリだそうだ。
お気に入りのシェフが居なくなるのは淋しいが、なんか最後の最後に
些細な夢が叶った、昼餉のひと時だった。
2005年2月25日金曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿