熱心と言えば聞こえは良いが、要するに傲慢だったり尊大だったり独り善がりだったりする。
ところが極めて謙虚になれる時がある。
人でもモノでも何かの存在が無くなる時だ。
喪失感を感じる人といえば何らかのかたちでそれを持っていた人達が主役であるべきで
そうでない人はおとなしくすべきという感性だ。
今日のヤンキースは現在のヤンキースタジアムでの最後のゲームを行い、
The Stadiumは85年の歴史を終えた。
レギュラーシーズンで6581試合、ポストシーズンで161試合が開催されたそうだ。
私がヤンキース戦をじっくり観戦するようになったのは2003年からだから6シーズン、
2005年からは基本的には全試合観戦している。
その前に観たのもあるから通算で400試合強は観戦しているだろうか。
ここ数年のカバー率の高さはNHKのメジャー解説者にも中々いないと思われる。
それなのにこの球場との関わり合いには例の謙虚さが出てしまうのだ。
俺なんか、ひよっこもひよっこ、もっと強い思い、数々の思い出を持ってる人がたくさんいる。
とても敵わない、敵う筈が無い。
私が軽々しくこの球場について語るのは、そういう人達をどこかで冒涜してしまうような遠慮がある。
私を謙虚にさせる理由はふたつある。
先ずはこの球場に実際に行ったことがないことだ。
体感したことがないから空間を語ろうにも実感が湧かない。
もうひとつは長い歴史の中のほんの最近しか知らないということだ。
今日の試合前、延々と行われたセレモニーで紹介された往年の名選手についても知識が乏しいし、
名前は知っていても現役時代を知らない弱みがある。
自分の人生をあらゆる場面でヤンキースと重ねてきた人々とは比較にならない。
私自身がこういう考えの持ち主だから今日の選手起用は是非とも、
この球場における‘年功序列’を重んじて欲しいと願っていた。
そして注目のスターティング・ラインナップが発表になった。
YANKEES
18 Johnny Damon CF
2 Derek Jeter SS
53 Bobby Abreu RF
13 Alex Rodriguez 3B
25 Jason Giambi 1B
22 Xavier Nady LF
24 Robinson Cano 2B
55 Hideki Matsui DH
26 Jose Molina C
46 Andy Pettitte LHP
予想通りのメンバーで、松井秀喜は8番DHだ。
実は昨日の試合の最終回、ジーターが手に死球を受けて退場。
場合によってはDHで出場予定の松井が押し出されて、
スタメンから外れるのではないかと少し心配していた。
結果的にはヤンキースタジアムの歴史的な試合のラインアップに当初の予定通り、
Hideki Matsuiの名前があることを確認できて、安堵し、素直にこれを喜んだ。
セレモニーの最後にスタメンを紹介するボブ・シェパードの声(録音)が響いた。
彼は闘病中だが昨日は残り試合数カウントダウンのレバーを引く役にもビデオ出演していた。
半世紀以上、まさに‘ヤンキースタジアムの声’として君臨した男の声は痺れる。
ディジグネイティド・ヒッター ヒデキィ・マチュイ ナンバーフィフティ・ファイブ
おお、スタンドの声援もまずまずじゃないか・・・(^O^)/
ナリポンの贔屓耳で勝手に判定すると声援の大きさはこの順位かな。
ジーター>>>デーモン>カノー>エー・ロッド>松井>ジオンビー>アブレイユ>ネィディ>モリーナ
まあ声援比べだったら、ちょっと太めのバーニーが断トツだったけどね。
そう言えば今日の試合はESPNの全米放送だったが、
その中の一部では‘YESの声’マイケル・ケイに実況を任せる粋な演出もあった。
試合はヤンキースが7-3で勝った。
ベーブ・ルースの初HRで始まった球場の歴史を締めくくったのは
伏兵ホセ・モリーナの決勝2ランHRだったようだ。
正直相手チームのBALもやりにくいところがあったに違いない。
もし負けていればBOSのプレイオフ進出が決まるという‘tragic number 1’だったが
それは阻止した。
久々の実戦になった松井もチームの初ヒットを打ち‘きっかけの松井’が健在なことを証明した。
3打席を終えた後交代させられたが、この歴史的なゲームで1安打できてホッとしたのではないか。
今まで何度となく耳にした試合終了後のNew York NewYork♪だが
今日のフランク・シナトラは一段と情感に溢れた歌い方だった。
エンドレスで繰り返される歌声はまるでこの終焉を拒んでいるようにも聞こえた。
ヤンスタにとってのファイナル・ディは松井の2008年シーズンにとってのファイナル・ディでもある。
明日にも左膝の手術を敢行する予定だ。
ニューヤンキースタジアムでの開幕戦は来年の4月16日、
その時のラインアップにHideki Matsuiの名前があることを望んでやまない。
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