これに関してBen Austenという人が8月15日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)で
こんな記事を書いている。
Are Ichiro's Stats All Smoke and Mirrors?
Some time in the next few weeks, Ichiro Suzuki of the Seattle Mariners will likely outrace a second baseman's throw or guide a low line drive into right field to collect his 200th hit of the season, making this the ninth consecutive year he has reached the milestone.
Mr. Suzuki already holds the record for most base hits in a single season (262) and is a hair behind the Cardinals' Albert Pujols for the highest career batting average among active players (.333).
But as prolific as he's been, Ichiro is a significantly less productive hitter than other players with similar batting averages. Of his 1,974 hits with Seattle, an astounding 81% have been singles, a higher proportion than any modern-era player with at least a .320 average. More remarkably, nearly one in four of his hits never left the infield. The problem: singles don't translate into runs as well as other kinds of hits. And when he's not hitting, he very rarely walks. Despite leading all batters in hits this season, Ichiro ranks No. 25 in on-base percentage and No. 39 in runs scored.
Thanks to a combination of formulas created by statisticians like Gary Gillette and Pete Palmer, it's possible to compute how many extra wins a hitter creates for his team per season. By that measure, Ichiro has averaged two "batting wins" a year during his career. Mr. Pujols, who leads the majors in on-base percentage, averages six.
We're not saying it's Ichiro's fault that the Mariners have lost more than 90 games in three of the last five full seasons. But maybe the wizard of the one-bagger isn't quite as valuable as he seems.
—Ben Austen
私が理解できる範囲で内容を要約してみる。
イチローはシーズン最多安打の記録も持っているし、
現役選手の中では通算打率もプホルスに迫る。
但し、ヒットは量産しているがその生産性は低い。
1974本のヒットのうちなんと81%がシングルヒット、おまけに4本に1本は内野安打。
フォアボールを選ぶことも稀だ。
だから今シーズンも打率で首位争いにいながら、出塁率では25位、得点でも39位だ。
打撃での勝利への貢献度を数値化する"batting wins"というのがあるが、
プホルスは1シーズンで6なのに対し、イチローは2に過ぎない。
マリナーズが過去5シーズンで3回も90敗以上しているのが、
それがイチローのせいだという気はない。
ただ‘シングルヒットの魔法使い’はそれほど役立っていないのかもしれない。
記事のタイトルにある‘Smoke and Mirrors’というのはマジシャンが客の目を誤魔化すために
使うことから、‘人の目を欺くような行為・物、まやかし’という意味。
‘the wizard of the one-bagger’と呼応させている感じだ。
一方で日本のマスコミは相変わらず‘200安打カウントダウン狂騒’を続けている。
‘あと49本となりました’
‘今日はノーヒットで足踏み状態ですが大丈夫でしょう’
‘ついにあと25本となりました’
こんなことを毎日やっているのである。
勿論あちらでもマイルストーンに関しての報道はある。
歴史が長い分より多くの記録がある。
但し、カウントダウンは精々あと1~3個に迫ってからだ。
特に通過点に過ぎない記録の場合は達成された時にその事実を伝えるだけだ。
別にあちらが常に正しくてこちらが間違っていると言うつもりはないが、
私からみれば異常としか思えない。
‘イチローが連続試合安打を‘4’に伸ばしました’
テレビのニュースの限られた時間のスポーツコーナーでこんなことを平気でやる神経がわからない。
安打製造機のイチロー様に対して‘4’だよ、たった‘4’だよ。
'If a dog bites a man, that's nothing, but if a man bites a dog, that's news.'
100年前のイギリスの新聞王Northcliffeの言葉だが、
中学?の英語の教科書で読んだような記憶がある。
かつてはマスコミ論の巻頭にでもあって、一般人でも知っている有名な話だが、
昨今のマスコミ関係者はそんな古臭い発想には興味が無いのだろうか。
上で紹介したWSJの記事をどこかの日本のメディアが取り上げるか待っていたが、
今のところ発見できなかった。
日経新聞でもやればいいと思うのだが・・・。
かつて現役ディーラーの頃は、WSJの早刷りの記事で相場が大きく動き翻弄されたものだ。
今回の記事の影響?
まったく無いだろうな。
奇しくもこの記事の指摘はいまやイチローに気味が悪いほどのデレデレ振りを見せる張本が、
かつてイチローを批判する時に言っていたものと似ている。
何とも皮肉な話と思えるが、安打数、打率という‘単純な数字’は単純な一般大衆の心を
捉えるには有効な武器となるということなのだろう。
確かに今のマスコミの手口は‘単純化’かもしれない。
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