松井秀喜のエンジェルスへの入団が正式に決まった。
松井を失うヤンキースだがファンの書き込みが止まらない。
一部のマスコミの中にも惜しむ論調があった。
膨大な量の英文を読んでいてはっきりしたことがあった。
Hideki Matsuiを形容する単語として頻出するのが‘clutch’‘productive’‘professional’だということだ。
これらは普段から言われていたことだが、松井がそういう印象を与えていることを再確認した。
現地のヤンキースファンの中に熱狂的な松井ファンがそう多くはいるとは思えないが、
この‘3要素’を備えた戦力が失われる現実に直面して、或いはその戦力をキープするコストが
実は十分に賄えるものだとわかって、予想以上の喪失感に襲われている感じだ。
勿論その大きな原動力になっているのはワールドシリーズでの鮮烈な活躍だ。
Matsuiが9年振りのワールドチャンピオンに導いてくれた・・・(^。^)
clutch・・・耳タコだがかつて9回一打同点、逆転の場面で打席に立たせたい打者に選ばれたことがある。
今年の8月の実績に対してはClutch Performer賞が与えられた。
宿敵BOS相手に良く打つ。
ここぞというビッグ・ゲーム、ビッグ・シチュエーションで真価を発揮する。
この辺が松井がクラッチとされる所以だ。
妙な話だが松井の大ファンとしては、松井がクラッチ・シチュエーションで
失敗した時の失望感も何度も味わっているので実は世間の評価の方が高すぎるような
気がすることもある。
チーム内にメジャー屈指の大打者でありながら非クラッチ系の権化のような
A-Rod(最近は解消)がいたのも好対照になって松井の存在を浮き出させてくれたかもしれない。
productive・・・run producerとかRBI machineとも呼ばれるように基本的には打点を稼ぐ能力がある。
あとはproductive outと言われる打撃ができる。
今年はイマイチだったがrunner on 3rd less than 2 outでの成功率はメジャー1,2位を争う。
professional・・・野球選手としての能力は当然だがそれ以外の面でも松井らしさが評価されている。
2006年の長期離脱の時の謝罪、審判に抗議しない、メディアに対する姿勢、起用法その他に関して
不平を言わない。
いつでもチームの勝利を最優先させる徹底的な姿勢も勿論そうだ。
プロとして欠落しているのは遅刻癖ぐらいか。
これらの三つの形容詞を使えるのは松井を至近距離で見てきたヤンキースファンならではのことだ。
敵の指揮官として松井を知っているソーシア監督も同様の印象を持っているからこそ、
今回の松井獲得の中で積極的に露出していたのかもしれない。
松井とソーシアの野球観、野球スタイルは相思相愛になれそうだ・・・(^。^)
入団会見に同席したソーシアは‘ヒデキはプロフェッショナル’‘ヒデキはクラッチで打てる’
‘体調を維持すれば素晴らしくプロダクティヴな打者になるだろう’
何のことはない、早くもこの三つの形容詞を使って賛辞を送っているのだ。
但し、エンジェルスファンはそう単純ではない。
公式のフォーラムを見ると逆風が吹いている。
根底には松井加入で残留の可能性がほぼ無くなった人気者ゲレーロへの愛着があるようだ。
同じ故障持ちならゲレーロと2年契約してやれよ、という論理だ。
面白かったのはNYYファンがこっちのフォーラムに遠征してきて、
松井の価値を説明し‘いい買い物’だと主張していたことだ。
しかし、言葉でいかに過去の素晴らしさを語ったところで限界がある。
これこそまさに百聞は一見に如かず。
現時点では松井に関して懐疑的な連中も松井が‘clutch’‘productive’‘professional’な
活躍を見せれば次第に納得し応援したくなるだろう。
逆に真価を発揮できなければ、勢いを増してバッシングに走る可能性もある。
クラッチヒッターという言葉は今や日本の野球ファン、中でもMLBファンには十分に浸透した。
NHKのMLB中継のオープニング映像にも現れる。
シルエットなので特定はできないが松井秀喜を念頭に置いていると思われる。
前にも書いたがクラッチヒッターと呼ばれるのは打者として最高の名誉だ。
この言葉の伝道師が日本人でいえば松井秀喜なのだ。
赤いキャップを被った新生・松井秀喜が引き続きクラッチヒッターとして、
本領を発揮することを心から願う。