2008年10月1日水曜日

専門家が賛辞を送り完売だったシティのサムライ債(第24回)の惨事~価格で10円下落、利回りで4%上昇の恐怖~

シティのサムライ債については過去2度書いた。

シティの個人向けサムライ債(3年3.22%)を買うと‘サブプライム・インフルエンザ’に罹る?
~前回発行分(3年2.66%)は大暴落中~


シティの既発サムライ債の暴落を1週間遅れで報道した日経新聞のお粗末
~市場混乱の記事で読者も混乱?~


その後の動きは9月27日の分に‘追記’という形で補足したが、
またまた書きたくなる状況になっている。

そもそもシティのサムライ債(第25回)が発行時点で‘割高商品’だということを暴露する、
もっと生意気に言えば啓蒙する意図で記事にした。

少なくともコメントを寄せてくれた一人が購入を見送った。

それでも豪気(脳天気)な人達は買ってしまうんだろうなと思っていたら、29日の申し込み最終日の後、
アメリカ時間にシティがワコビアを救済買収するというニュースが飛び込んできた。
それを受けて払込日の30日に急遽、第25回債の発行延期が決定した。
投資判断にかかわる経営状況の変化があったと言うのが理由だ。
実際、S&Pとムーディーズが格付けの引き下げを検討するとの報道もあった。

私はこの突然の中止を見て‘入籍直前の価値ある破談’だと思った。

シティにとっては‘割安商品’で資金調達ができなかったことが悔やまれるだろうが、
連中はどうでもいい。
多くの個人が‘割高商品’を買うことから強制的に‘解放’されたことは良かったと感じた。

問題は第24回債を買った人達である。
この暴落については過去2回の記事でも詳しく触れた。
最初の記事では5円の下落を‘大暴落’と大袈裟に書いた。
それがこの3日間でさらに下落したのだ。


9月26日 97円27銭 3.75% 96円47銭
9月29日 95円79銭 4.37% 94円97銭
9月30日 95円08銭 4.68% 90円15銭
10月1日 90円90銭 6.57% 90円10銭

左から日付、証券業協会発表の気配値(仲値)、利回り、日興コーディアル買取単価

週末をはさんだ26日から29日にかけての1円50銭の下落を説明する客観的要因は思い当たらない。
そしてその後の5円下落。

確かにワコビアの買収といった大きなニュース、
それに伴う起債の延期という要因はあったものの5円だよ、5円。
利回りにして2%以上だよ。

ワコビアの買収はFDICに泣かれてその要請に応じた印象が強い。
その代りに、今後何か新たな損が発生しても補填してもらえる条件になっているようだから、
それ自体が大きく信用力を棄損するものではないと思う。

その証拠に株価は例の金融安定化法案の否決騒ぎの中で上昇している。

日興の担当者に電話で訊ねてみたが、どうも要領を得ない。
24回債を保有している客でもないのに、しつこく訊くからいい加減うざいと思われている節もある。

私のディーラー時代の経験から言うと、
買い材料、売り材料がはっきりしていて素直に相場がその方向で動くのは楽だ。
時に材料と正反対に動くことがあるが、これもまた材料の織り込み方の問題等で
説明できない訳ではない。

一番怖いのは理由を見つけられないままに激しく動くマーケットだ。

シティの24回サムライ債で言えば、95円までの下落はなんとなく理解できるが、
その後の90円までの下落が恐怖だ。
同時期に発行されたサムライ債、コモンウェルズやウェストパックは小動きだから、
シティ固有の動きと言える。

持ってもいないのに恐怖を感じるのも変な話だが、実際に持っている人達はどうなのだろうか。

な~に、別に時価評価する必要もないし、利払いがきちんと行われて、
2年9カ月後に無事に償還されれば無問題。

と考えられるタイプは大丈夫だろうが、銀行の破綻のニュースを聞くたびにドキドキして
ストレスを感じる人もいるだろう。

今さら断罪してもしょうがないが、このシティの個人向けサムライ債が発行された時は、
ほとんどの専門家が低金利に喘ぐ個人投資家には魅力溢れる商品だと‘賛辞’を送っていた。
実際、発売4,5日で完売だった。

しかし、ほんの3ヶ月の間に連中が予想できない‘惨事’になった。
価格は100円→90円と10円下落して、利回りは2.66%→6.57%と4%上昇した。

いつも書くことだが自分でコミットしない専門家の言葉は信じるに値しない。

別にデフォルトになった訳でもないのにどこが惨事だ、
と開き直る奴もいそうだが、倍以上のリターンのチャンスを予想できなかっただけで
プロとは言えない。

結果責任を問われないプロフェッショナルなんて存在価値ゼロなのだ。

シティのサムライ債(25回債)の発行は飽くまでも‘延期’だから、何れ発行される可能性はある。
発行できる環境になったとして、どんな条件になるか。

そして世の専門家達はどんな顔をしてどんなコメントをするのか。
そして、そして最終的に個人投資家はどういう判断を下すのか。

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