ナリポンは以前も書いたが健康だった頃の飲み歩きは、
~基本はツーショットでカウンター~を貫いていた。
最も、多かったのはバーだ。
バーで何を頼むかも、決まっていた。
マティーニである。
‘カクテルの王様’だの
‘カクテルは、マティーニに始まり、マティーニに終わる’
とか言われるが、これだけシンプルにして、その奥深さを感じさせるものもない。
値段的にもみても、メニューで一番安い。
それでいて、バーテンダーの‘力量’をみるには最適だ。
蕎麦屋で言えば、もりそば、スパゲティで言えば、
アリオ・エ・オリオ・ぺペロンチーノのようなものだ。
ナリポンはこの手のシンプル系が大好きだ。
マティーニと言えば、今はそれだけでドライ・マティーニを指すようだが、
昔は甘口のヴェルモットを使ったものもあった。
ジンとヴェルモットをステアするだけの極めて単純なレシピな割りに、
或いは、その単純さが故に、ヴァリエーションは多く、味わいも違う。
ジンとヴェルモットの割合にも嗜好が分かれる。
‘ドライであればドライであるほど通であるような風潮がある’
もうここに紹介するのも憚れるほど有名な話だが、イギリスの宰相チャーチルは
ヴェルモットのラベルを眺めながら、ジンをニートで飲んでいたとされる。
ヴェルモットを氷と一緒にステアした後、ヴェルモットは棄てる方法もある。
私は特にそこまでの拘りはないが、ジンはタンカレーと必ず指定する。
冷凍庫でキンキンに冷えた、緑のデブッチョボトルが好きだ。
飲み方は邪道かも知れないが、オン・ザ・ロックだ。
これは長い経験からそうなった。
所謂カクテルグラスでサーブされるのが普通だが、あれだと持っていて、どうもしっくりこない。
おまけに、飲むペースがどうしても速くなってしまい、身体にも懐にも優しくない。
オン・ザ・ロックにすることによって、本来はショート・カクテルなのにチビチビやれるのである。
マティーニに関してのいろいろな経験があるがそのうちのいくつかを書いてみる。
箱崎のロイヤルパークの1階ラウンジでのこと。
いつものように、
‘ドライ・マティーニをロックで、ジンはタンカレーでお願いします。’
知り合って間もない女性と一緒の時だった。
運ばれてきた、グラスを2,3回口にしたかしないか・・・
女性が慌てて飛んできた。
‘申し訳ございません。お客様にジンはタンカレーとご注文頂いたのですが、
当方の手違いで、ゴードンでお出ししてしまいました。
ただ今、直ぐお持ちいたしますので・・・。’
‘いやぁ、実は私も今味わいが違うなぁ、と思っていたところなんですよ。’
と切り返したものの、
心の中では、ゴードンを飲みながら、相手に
‘やっぱり、ジンはタンカレーに限るね’
なんて講釈をたれてなくてヨカッタとホッとしたりして・・・(>_<)
もうひとつはオリーブの話。
スペインに定期的に出張するようなになって、オリーブをつまみで食べる習慣がついた。
そこで、一時期、日本でもマティーニを頼む時‘オリーブ3つ’と言うようになった。
みなさん、スティックに色々な苦労をして刺してくれたが、どこでも割り増し料金は無かった。
或る日、芝の東京プリンスのバーに行ったときだった。
連れが数人いたのでテーブル席に座った。
‘タンカレーマティーニ・ロック、できればオリーブを3つ’
その注文だけで仲間には受けたが、実際運ばれてくると、グラスにはオリーブが1個。
但し、別の小皿にオリーブが5,6個載せられていた。
仲間はそれを見てさらに受けていたが、私はチョッと考えてしまった。
バーテンダーはあのホテルの建物そのものと同じような、ヴェテランの方だった。
‘これって、サービスなのか、それとも彼なりの拘り
(美意識みたいなもの)に基づいた抵抗なのか’
その時の私は後者だと解釈して、突然自分が下品だと感じた。
それを機に‘オリーブ3個注文’は数ヶ月で止めた。
実際、輸入されたオリーブは現地で食べるそれと較べると明らかに不味い。
マティーニにはオリーブの他に、レモンピールで香り付けをすることもある。
ニューヨークに行ったとき、バーテンダーに
Would you like to be twisted?
みたいなことを訊かれて、初めは全く意味不明だったが、
レモンの皮を指につまんで捻るから、ああいう言い方になったのだろう。
確かに、squeeze(搾る)じゃ可笑しい。
アメリカ映画でもマティーニを飲むシーンはしょっちゅう目にするが、
グラスがまさにアメリカンサイズだ。
あと、自分の限られた経験から言うと、アメリカ人はジンのマティーニより、
ウォッカのマティーニを好むような気がする。
少なくとも、ただ単にマティーニと注文してもダメ。
ジンなのかウォッカなのか特定しないといけない。
私が、人生で最も好きで、恐らく最も多くのマティーニを飲んだバーは、
帝国ホテル内のオールド・インペリアル・バーだと思う。
作り手によって、微妙に出来が違うような気もしたが、
口にした時に、独特のピリッと舌がしびれる感じがあり、それが堪らなかった。
実際、バーテンダーの業界にあっても評判の高いレシピらしい。
機会があれば、また味わってみたいが、恐らくいまだに喫煙可で
紫煙がスポットライトを浴びて、ブラウン現象を起こしているのだろう。
マティーニ1杯を飲む体力はあるが、煙の中に5分もいれば確実に体調を崩してしまいそうだ。
以上、健康で飲み歩いていた頃を思い出しての記事でした。
2005年8月29日月曜日
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