子供の頃、我々の世代で東の人間にとって、たこ焼きといえば余り美味いという印象はなかった。
お祭りや花見の時にテキ屋の兄ちゃんが作るたこ焼きは上質とは言えない粉を使い
口の中でネチャネチャ。
だったら、ソース焼きそばの方が断然だった。
それでも、クルクルとひっくり返されるたこ焼きは、見る分には楽しかった。
40代半ばになって、終にそのクルクルに挑戦する機会がやってきた。
従妹の結婚式が大阪であり、泊りがけで出かけた時だ。
マルビルにあるホテルに宿泊していたが、その地下に、たこ焼処 蛸之徹(タコノテツ)と言う店があり、
親戚一同がそこで昼をとるよう叔父がアレンジしていた。
夕方の結婚披露宴の食事はオープンしたばかりのザ・リッツカールトン大阪だったので、
いたずらにお腹を膨らませる事には抵抗があった。
が、その店は客が自分で焼く店として評判があると聞き参加した。
3卓を占領したはいいが、誰も経験者はいなかった。
色々なヴァリエーションがあるメニューの中から適当に注文、いよいよ勝負。
みんな悪戦苦闘した。
途中で諦めて、生ビールに集中する輩もいた。
時々、誰かが偶然に引っくり返しに成功して歓声をあげるが、所詮偶然だから次は矢張り
失敗する。
箸を使えない外人が日本食を出されて苦労しているのとは訳が違う。
彼らは、ナイフやフォークを借りて完成された料理を食べればいい。
我々がその時直面していた片方しか焼けてないたこ焼きは、食べ物として未完成品なのだ。
しかし、そこは勝手知ったるナントカで・・・颯爽と店員様が登場。
できそこないの無様なたこ焼きを実に巧みに素早く引っくり返した。
私のテーブルが片付くと、隣の卓の叔母もその店員様にまさに懇願の眼差し(笑)
結局、3卓とも店員様がすんでのところでたこ焼きに仕上げてくれた。
たこ焼きは、自分達の最初の不手際のせいか、余り美味しくはなかった。
頭の中では、クルクル回せると思っていたのが出来なかったことで挫折感にも似た感情が
美味しく感じさせなかったのかも知れない。
あれから、ほぼ4年・・・
実は我が家の二十歳になんなんとするホットプレートが終に壊れて、新しい物を購入。
それには、直径43mmの大きなたこ焼きが30個焼けるプレートも付いていた。
届いたその夜は、当然焼肉とたこ焼き。
家族でたこ焼きを焼いた(苦い)経験があるのは私だけ。
その時の経験を話しながら、粉を流し込んだ。
3人で竹串を持ち、自分の‘陣地’を決め、いよいよクルリの作業。
ありゃりゃ、なんじゃこりゃ、簡単に廻るじゃん!
表面が加工されているので、全然くっつかない。
面白い位、クルクル自在に廻せる。
私の苦労話が嘘みたいだ。
その後、何度かたこ焼きをやった。
勿論、クルクル・・・
しかし、誰でも出来るとなると簡単すぎて感激が薄れていく。
誰でも名人になれるんだったら、名人とは呼ばないよな。
買ったのは象印ホットプレート やきやき三昧 EA-CS65
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