2005年3月19日土曜日

ムショから出たら何を喰う~高倉健の場合~

「幸福の黄色いハンカチ」
山田洋次監督、高倉健主演の映画。
勿論、陳腐ながらも素直にラストシーンは感動できるが、
私がこの映画を何度観てもいつも心から感動できるのは実はオープニング直後のところ、
網走刑務所を出所した健さんが駅前の食堂に入るシーンだ。

入るといきなり「ビールください」と言い、席について壁に貼られた品書きに目を輝かせ、
「醤油ラーメンとカツ丼」と注文する。
ビールのコップを両手で拝むように掴み、運ばれてきたお盆にはラーメンとカツ丼。
‘娑婆の風’が何よりの特選素材だ。

あのシーンを観ていると、マジにムショ暮らしをしてあの感激を味わいたいと思ったりした・・・(>_<)

健さんの映画でいえば他にも同様なシーンがある。
「冬の華」でも出所した翌朝、真っ白なマンションの一室でバターを塗りジャムをたっぷりのせた
トーストを臭いを嗅ぎながら食べるのである。
クロード・チアリの哀切極まるギターの音色が背景に流れている。

良い設定だが、ビール、ラーメン、カツ丼の黄金トリオには敵わない。

幸か不幸か、私はムショ暮らしの経験は無い。
日本の銀行に入った直後、20日間位の新人研修合宿があったが、まあそこそこの餌は
与えられた。

心臓で入院した最長は9日間。
9日間は短いが、危険な状態から娑婆に復帰したという意味では長い時間とも言える。

午前中退院し、昼飯を何にするか、悩んだ。
私は馴染みのラーメン屋を考えていたが、カミサンが家の近所に新しくできたラーメン屋に
凄い行列ができていると囁く。
じゃあ、通り道だから一応そのラーメン屋を見た上で、という事になった。
11時半というのに確かに行列が出来ていた。
‘N本’という店だ。
で、その行列を一旦見たら自然に並びたくなるのが人情だ。

退院したばかりの身体で30分近く並び、そこの一番人気のMタンメンを注文した。
が、全然私の好みじゃなかった。
辛さが売りらしいが、とろみの油が上質とは言えない。

入院開けの胃袋には刺激が強すぎたのか下痢をする破目に・・・。

長いムショ暮らしの後だと、何でも美味く感じるってのは昔の話かも・・・。
やはり、素直に美味い店に行って喰うべきかもよ。

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