2005年5月26日木曜日

極私的競馬小史~競馬場を歌舞伎座にしてしまう青年?~

競馬場に足に運ぶのは、場外で馬券を買って家でのテレビ観戦に比べて色々なメリットがあった。

勿論、生で迫力のあるレースを観戦できることが一番だ。
パドックや返し馬を見てから、或いは最新オッズを確認した上で馬券を購入できるし、
当時は8枠制の連複だったから(同じ枠の馬が取り消しても返還馬券にならず)ぎりぎりの
取り消しにも対応できた。

資金面で言えば、的中レースの資金を再投資する事ができる。

まあ、これらのメリットは誰でも指摘していた事であるが、私ならではの楽しみ方があった。

それは、掛け声。
ゴール前の直線で、自分の買った馬が馬券に絡みそうなタイミングで、掛け声を掛けるのである。
そう、歌舞伎で屋号を叫ぶのと似ている。
「澤瀉屋(おもだかや)!」「成駒屋!」

その要領で、ビシッと決まった時の気分は最高だ。
逆に、ゴール前の直線で懸命に粘っているが、もう足色が鈍っている馬を大声で叫んでしまい
あっさりかわされてしまった時は、バツが悪い。
まるで、駆け込み乗車をしようとして、目の前でドアが閉まってしまった後と一緒(笑)

ゴール前の動きを注視して、ここぞというタイミングで声を発する、飽くまでも駆けている馬が
主体である。
ただ、何回かはナリポンの声のお陰で、その馬が実力以上の力を発揮したと思えるような
こともあった。(←と勝手に思い込んでいる)

TTGの同期にカミノリュウオーという馬がいた、ダービーにも出走し6着、7着のテンポイントより
上位だった。
この馬、相手が強いメンバーでも掲示板に載る(5着以内)ことが多いので、メンバーが手薄に
なると直ぐに1,2番人気にされる。
それでも何故か、3~5着に沈むのである。
大崩はしないから、いつも印はつく。
その日も東京競馬場にいっていたがメインレースにそのカミノリュウオーが出走。
ただ、流石に4~5回?連を外していたのが嫌気されたのか、余り人気がなかった。
私の嫌いなタイプの馬だったが、その日は馬券的に妙味を感じたので勝負。

ゴール前100メートル、相変わらず5番あたりでもがいている。
その時だった、地声の大きさでは定評のあるナリポンの一声

カミノリュウオ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その声と同時に、馬がスルスルと伸びてきた。
ひょっとすると2着があるかもと思ったが、ゴール直前でなんと先頭へ・・・1着でゴール。
(おいおい、俺は連複だから別に2着でいいんだが・・・)

それにしてもなんとも絶妙の掛け声だった。
多分、買っていたのは精々特券1枚だろうが、声の迫力だけなら10万円分(笑)
押さえで的中させた友人も
「あのジリ脚があの脚を使えたのは、おまえの一声のせいだ」とマジ顔。

掛け声で、もう1頭思い出に残っているはメイジソレントという馬だ。
その日も府中、午前中の未勝利戦だったと思う。
例の馬主の息子のS君と彼の学友のT君が一緒だった。
このふたりが、爆弾と称して2倍台の馬券を1点買いしようとしていた。
彼等にいわせれば午前中で最も鉄板なレース、3千円か5千円かを打ち込んでいた。

私は彼等につきあうほどの度胸も軍資金も無かったので、お気に入り競馬エイトの戸田の
ぽっつん◎のメイジソレントから、1,2番人気へ2点の400円投資。
大勝負をする覚悟を決めていた彼等は貧乏人を見下げるように‘ふ~ん’の表情。

その日は、初めて第4コーナーの指定席で観戦していた。

レースが始まり、馬たちが4角にさしかかった時、メイジソレントは2着に10馬身位の差を
つけて先頭。
ここで、ナリポンが叫ぶ。

メイジソレント~~~~~~~~~いけ~~~~~~~~~~~~~~~!

‘帰れソレントへ’というイタリア民謡があるが‘ゆけ~ソレント’だ。
ところが、普段観慣れていない4角から観ていると、まるで遠近感が掴めない。
長い直線、どうせ、捕まっただろうなと思っていたら、双眼鏡で覗いていたS君が『多分残った』

結果、2番人気と絡んで、80倍馬券。
「やったーーー」と思ったが、1点勝負をしたふたりのことが頭をよぎり喜びを噛み潰していた。

すると、なんだ、ありゃりゃ・・・
あのふたりも満面の笑みではないか。
「いやぁ、戸田の印が気になっておさえたんだよ。」

なんのことは無い、ふたりとも的中させていたのである。
しかも、400円(笑)

以上、私の掛け声の成功例を2つあげたが、勿論失敗例は数え切れない。
それでも、競馬場で実際に馬に向かって大声を出すのは、ひょっとしたら声が届くかも
しれないからいい。

テレビの前で、抜け目の馬が大外から伸びてきて小声で
‘来るな~~~~~’と呟いて、当然のように来ちゃうことに較べればね(笑)

しかし、今こうして何千円の勝負を‘大勝負’と書いてることに違和感を覚えながらも、
逆になんとも言えない懐かしさが込み上げてきた。

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