2005年12月4日日曜日

フィンガーボウルの水を飲む人をかばうのは本当に美談か~失敗して‘経験値’を高めるのが人生だ~

口内炎もようやく治まってきたので、今日の昼は外食をした。

いわゆる、町の中華屋さんといった店で、夫婦ふたりでやっている。

ここの店主は、仕事が丁寧だが、作るのはいつもひとつずつしか作らないから、
ちょっと混み始めると異様に待たされる。

私達が頼むのはいつも決まっている。
タンメンとチャーハンだ。
特にチャーハンは美味で、あのパラパラ感は自宅では味わえない
オカミサンも水を持ってくると‘いつもと一緒?’で通じる。

私達の後に、男子高校生がふたり入ってきた。
どうやら、初めての来店のようで、壁に貼られたメニューを真剣に見ている。
ひとりは、あっさりとラーメンに決めるが、もうひとりはかなり悩んでいる。
‘ねぇ、タンメンって何?’と相手に訊くが‘タンメンはタンメンだよ’
‘ねぇ、中華丼って何?’と相手に訊くが返事無し。

‘チャーハンでもいんだけどなぁ、ねぇ、天津丼っってカニ玉だよな’
すると、相手は‘知らねぇ、一応聞いてみれば・・・’

結局、店の人に聞かずに‘天津丼ください’と注文した。

‘こいつ、タンメン、中華丼を知らずに天津丼は知っているのかよ、何たる跛行性だ’

その後のふたりの会話で、ふたりは私の出身高校の後輩でいま3年生、
タンメンを知らない奴は医学部狙いだという事が分かった。

タンメンを知らなくても医者にはなれるだろうが、
今どきの若者にして、あまりの食の知識の無さには唖然とした。

そういえば、もう30年以上前だが、我々が高校の修学旅行で関西に行った時のことを思い出した。
京都のいかにも修学旅行専門旅館といった感じの宿に泊まった時の夕食はすき焼きだった。

取り皿には生卵があったが、S君が卵を割ってかき混ぜたまでは良かったが、
そこに醤油をドバッと入れてしまったのだ。

それを発見した誰かが(オレジャナイヨ)
‘おい、こいつ生卵に醤油入れてるぞ’と大騒ぎ。

それを聞いた連中が一斉にここぞとばかりに、彼をなじりまくり馬鹿にした。
徹底的に攻撃されたS君は越境入学で、いわゆる郡部の出身だった。
素直に知らなかったと言えばいいのに、必死に誤魔化そうとしたから始末が悪い。

当時の英語の教科書には、こんな感じの話が載っていた。
ある王様が晩餐会を開いた時に、ゲストのひとりがフィンガーボウルの水を飲んでしまった。
他のゲストはそれを見て驚くが、ホストもすかさず水を飲んだことにより、
他のゲストも追随して水を飲んだ。
これが、相手を思いやる真のマナーだ。

英語としてだけでなく、何処か教訓的な美談として取り上げていたのだろうが、
そんな‘効果’は、まったく無かった・・・(-_-;)

この事件がきっかけになったかどうかはわからないが、S君は京大を受験し見事合格した(笑)

S君は大恥を掻いたことで2度と同じ間違いを犯さなかっただろう。

一方、フィンガーボウルの水を飲んだ人は、その場は救われたかもしれないが、
無反省に一生、飲み続けたのかもしれない(笑)

そう考えると、あの逸話はやはり、ああいう階級の世界のああいう場面での話であって、
いかにも‘上から見た論理’とも言えなくない。

実社会では、失敗は失敗として、時には恥も掻きながら‘経験値’を高めていく方が
より実践的な生き方だと思う。

正しい事を知らない、知らせない、よりは、知っている、教えてあげる方が良いのではないか。

因みに、フィンガーボウルを使うときは片手ずつというのが正式だって知ってました?

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