私が初めてスペインに行ったのはスペイン系の銀行に転職した1992年の秋だ。
それ以降、退職するまでの8年間、毎年秋に、チーフ・ディーラー会議出席の
ためにスペインに行った。
初めて行った時からいきなり、嵌ったのがハモンセラーノだ。
生ハムなのだが、それまで味わった事のない独特の香りと味わいがあるのだ。
‘なんか、イタリアのプロシュートなんて目じゃありませんよ ’
初体験で虜になるのは、別に私に限った事ではない。
ナリポンとは似ても似つかない顔をしている坂口憲二(ナンカ変)が、何年か前に
‘とんねるずの食わず嫌い王’に出演した時に語っていた。
「仕事で初めてスペインに行ったんですが、食べ物が美味しくて、
特にハモンセラーノという生ハムが・・・毎日通いつめました」
その後しばらくして、石橋貴(俺はキライ)が質問する。
「生ハム以外には何か美味しいのは?」
「いやぁ、とにかく生ハムが美味しかった、なんでも美味しいんですけどね・・・」
良い人イメージの坂口だから、気を遣っているのだろうが、
彼にとっては要するにハモンが群を抜いて美味かったのだ。
‘でも、彼の感じ、すげぇ、わかるなぁ’
私もバルでもレストランでも必ず注文していた。
天井から、何本もの脚が吊るされている風景が壮観だ。
専用の台にはめ込み、これぞ職人技という感じで一枚、一枚、削ぐように切っていく。
値段もばらつきがあるが、やはり安すぎると味が落ちる。
3,4日の会議期間中の昼飯は銀行の役員食堂みたいなところで食べるが、
その時も、食事前に食前酒とともに、ハモンが必ず供された。
一流とは言えない銀行だったが、出されるハモンセラーノだけで格付けすれば
トリプルAだった(笑)
2年目には、私のハモン好きが有名になり、
副部長がおみやげにブロックを密閉パックしたものを用意してくれた。
当時は、実は日本への持込は禁止されていたが・・・(-_-;)
そして、3年目からは、実費を払って彼の奥さんに買ってもらうようになった。
‘自分の国のものを美味い美味いと言われるのは、いい気分なんだろうな’
でもハモンを楽しめるのは、出張期間中とおみやげがある1ヶ月くらいだ。
日本でハモンセラーノ作りに挑戦した人もいて、2度ほど試してみたが、
値段も安くないし味的にも満足できなかった。
そして2000年、私が大病して、6月には退職し、スペインに行く機会も体力も無くなったと
悲しんでいたら、なんのことはない、ハモンの輸入が解禁されていた。
ハモンの醍醐味はやはりあの塊を、都度スライスすることにあると思っていたし、
マドリッドの空港で買った、真空パックのスライスの印象は余り良くなかった。
ところが、何年か前に、フォアグラの購入のついでに買った、ハモンセラーノのスライスが、
予想外の大当たりだったのだ。
‘そうそう、この香りだ、この風味だ’
スペイン在住経験のある友人にも贈ってあげたが、彼女も中々の出来だと喜んでいた。
私の食べ方のオススメは、ただひたすらシンプルにハムをそのまま食べる、である。
焼いたバケットとの相性は悪くない。
ただ、生ハムと言えばメロンというような発想は、ハモンには合わないと個人的には思う。
ある程度空気にさらして、表面がしっとりとしてきて、輝いてきたら食べ頃だ。
ここ2,3年、日本のグルメ関係者の間では、イベリコ豚が大人気だ。
ハモンの中でも、イベリコを使ったハモン・イベリコと言うのがあって、最高級品とされている。
グラム当たりで較べても、セラーノの4~6倍の値段はする。
ただ私の好みから言えば、イベリコは脂がきつすぎるし、熟成しすぎた感じでしつこい。
‘大トロより、ほどよく赤身と脂が混じっている中トロの方が美味い’
もし、同じ値段で手に入るとしても、セラーノを選ぶだろう。
これから、クリスマス、年末・年始を迎える。
チョッと‘脱日常’を味わうには、ハモンセラーノは悪くない。
取り敢えず、この手ごろなスライスを試して、次に原木を試して、
将来的には現地スペインに食べに行く。
これがハモン食いの進化の過程だな。
すると、私の場合は逆に退化していることになるな(笑)
‘ハムの人’を漢字にすると‘公人’(ナンチャッテ)
2005年12月18日日曜日
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